テレワーク環境整備のための投資は「経費」になるのか

2020年11月05日・コラム
テレワーク環境整備のための投資は「経費」になるのか

目次

    2020年はそれまで当たり前だった、朝の始業まで会社に行くこと。オフィスで1日を過ごすこと。自宅は帰って家族と過ごすための場所。さも当然とされた仕事と家庭の距離感が、大きく変わった1年でもありました。自宅を職場に変えるため、パソコンを新調し、家庭のネットワークを再整備した人も多いでしょう。書類管理のために自宅に金庫を購入した、という話も。それらのお金、どう考えても仕事関連の投資になると思うのですが、ちゃんと返ってくるのでしょうか。
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    1.基本的な経費の考え方

    テレワーク環境整備のための投資は「経費」になるのか

    まず基本的な経費の考え方から。法人会計において経費は「支出」であり、法人として得た売上からその支出を引いて経常利益等を算出します。経営者にとって経費になるかは「税金の計算にその支出を適用できるか」ということ。ただ一般的には、経費という言葉は別の使われ方をしています。

    コロナ禍になり聞かなくなりましたが、以前は新宿や新橋でよく耳にした「今日の飲み代は経費だから!」という言葉。その飲み代が会社として目指す売上の取得に寄与したものならば、会社から「後で」実費を支給して貰えるというもの。いわゆる事前に申請して飲食代を受け取る「概算払い」もありますが、一般的に経費のイメージは前者です。これを前提に、テレワーク環境整備のための支出は経費として会社に認められるのか。ここを明確にしたうえで、本題に入ります。

    2.テレワーク準備費用は経費になるのか

    テレワーク環境整備のための投資は「経費」になるのか

    自宅の一部屋を職場に変えた数々の投資。まず基本として、これが経費になるのかを決めるのは従業員本人ではなく、上司や社長でも、ましてや会社の役員会や部長会でもありません。どこかというと、国税庁です。

    国税庁は全国の税務署に対して、通達という形式で「何が経費になるか」を定めています。税務署や全国の税理士、会社の経費担当者はこの通達をもとに、テレワーク環境整備の投資が経費になるか判断します。今回のコロナ感染対策が本格化する前から、自宅での職務遂行を目的とした自宅用パソコンやネットワーク整備、セキュリティなどは対象と考えられていたため、従業員にとっては会社に申請され認められることで、はじめてその投資が経費の対象になるといえるでしょう。

    さて、問題は会社に経費申請が受け入れて貰えなかった場合です。本来は会社に確認してから購入するべきかもしれませんが、こと2020年に関しては、この先どうなるんだ、という不透明感のなかでしたので仕方がありません。とはいえ、経費になりませんでした、という展開では心に引っかかるものがあるのも実際のところ。

    そこで活用できる可能性があるのが、「特定支出控除」です。

    3.特定支出控除を使う?

    テレワーク環境整備のための投資は「経費」になるのか

    特定支出控除とは、確定申告において給与支給者を対象にした「経費の認定」のこと。通常、給与支給者は「給与所得控除」にて支出の概算を控除し、所得税を計算しています。ある年度において、この給与所得控除額の基準を特定支出の合計額が超えたとき、特定支出控除として申請することができます。

    ※特定支出控除は、特定支出の額の合計額が給与所得控除額の2分の1(最高 125 万円)を超える場合、その超える部分について、確定申告を通じて給与所得の金額の計算上控除することができます。(出典:国税庁)

    ※特定支出は、通勤費/転居費/研修費/資格取得費/帰宅旅費/図書費/衣服費/交際費などの支出のうち一定の要件を満たすもので、給与等の支払者によって証明がされたもののことを指します。(出典:国税庁)

    給与所得控除額はその対象者の給与額によって変わります。参考までに、以下が給与所得控除額の早見表です。

    <給与所得控除額の早見表>※令和2年分以降

    テレワーク環境整備のための投資は「経費」になるのか

    出典:国税庁

    4.テレワーク関連費の扱いは?

    テレワーク環境整備のための投資は「経費」になるのか

    執筆時の2020年10月現在、テレワーク関連費について国税庁から通達が出ていません。2021年の確定申告においてテレワーク関連費が特定支出に該当するのか?という論点は明らかなので、2020年年末から年明けにかけて通達の発表が期待されます(確定申告は毎年2月-3月)。現時点で購入したパソコンやネットワーク機器などは購入証明(領収書)の保存を徹底しましょう。

    前項にて会社で認められなかった経費について、特定支出控除が解決策になる「可能性がある」と書いた理由は、この制度に大きな難点があるからです。それは、確定申告時の控除利用について「会社の承認」が必要なことです。

    会社で受け入れて貰えなかった支出を「補完」する役割の特定支出控除が、会社の承認が必要というのは何とも本末転倒ですが、テレワークのように短期間で承認が求められる「経費になりそうなもの」がある以上、税務署の判断力を考えても(会社の承認スキームは)止むを得ないもののようです。ただ会社としても、上記のように国税庁から特定控除としての対象通達が出ていない以上、なかなか許諾を出すのは難しいのが現状のよう。従業員だけではなく、会社としても通達待ちのタイミングというところでしょうか。

    また注意すべきは、特定支出控除は「控除」のため、購入費全額が戻ってくるものではない、ということ。あくまで所得税を節税するための控除です。ただ会社員は前年の年末に「年末調整」として(勤務先が代わりに)所得税・住民税を支払っています(そのため本来は確定申告は不要です)。一度支払った所得税を、確定申告を通して「還付」する作業になります。このあたりは煩雑ですので、なかなか気持ちが進まないところでもあります。

    テレワークは一部の領域・会社の話ではなく、日本全体(むしろ世界中)を巻き込んだ働き方の変化です。2021年の確定申告シーズンまでは、世の中に与える影響を鑑みて何かしら通達が出るものと思います。テレワークを推奨する国の背景も後押しとなるでしょう。まずはその流れを見ながら、テレワークでパフォーマンスを出すことに集中していきましょう。各会社での判断は難しいにしろ、それが通達待ちではなく「テレワーク投資を経費にする」手段になっていくと思います。

    【この記事の著者】

    株式会社FP-MYS 工藤 崇

    株式会社FP-MYS 工藤 崇

    FP-MYS代表取締役社長CEO。1982年北海道生まれ。相続×Fintechプラットフォーム「レタプラ」開発・運営。資格学校勤務後不動産会社、建築会社を経て2015年FP事務所を設立。1年後の2016年7月に法人化。多数の執筆のほか、Fintech関連のセミナー講師実績を有する現役の独立型ファイナンシャルプランナー(FP)として活動中。スタートアップとしてシードラウンドまでの資金調達完了済み。拠点は東京都中央区茅場町。

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