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最初に東京・大阪・名古屋の会社が集積するところに「片道2時間通勤」が可能な居住地はどのあたりなのかを調べてみましょう。
※Yahoo! JAPAN路線情報にて調査(Yahoo! JAPAN路線情報:https://transit.yahoo.co.jp/)
おそらく読者の皆様がイメージしていたよりも遠く、「ここから通えるのか」という感想になると思います。現実的には新幹線や特急路線の有無によって変わりますが、いっけん通勤範囲内とは捉えられない場所からも、片道約2時間での通勤が可能であることがわかります。とはいえ、これを週5(月~金)行うのは困難です。
ただ昨今、郊外通勤の利用者は増えています。理由はここ数年、一気に進んだ「週1通勤」です。
それまではITなど一部の職種に限り本格的に採用していたリモートワークが大きく浸透しました。社内会議は顔を合わせてこそ、という前提が今や誰も持たないほどオンライン会議が浸透し、高品質のツールが導入されています。
リモートワーク以上に大きいのが印鑑の廃止です。2020年以降行政が本腰を入れて印鑑廃止に動いたこともあり、どうしても印鑑が無くてはならない認印などの手続きは根本的に改革されました。合わせてベンチャー企業を中心に取り組んでいた印鑑のオンライン化も浸透しています。この状況はこれからも推奨されていくことでしょう。
この2点からいえることは、必ずしも会社に通わなくても良くなったこと。それまでリモートワークを中心にしながらも「印鑑だけは会社に行かなくては」という最後の砦だった手続きがオンラインに代替することによって、会社に行く必要性が無くなったのです。そうすると湧き上がったのが、「ならばこんなに高い家賃を払わなくても良くないか」という考え方です。週の稼働時間のうち、絞りに絞って出社・顔合わせが必要な手続きは会社で、ほかはオンラインに代替することによって、「週1通勤」が可能になります。
その変化を察知して動いたのが、冒頭で紹介した「片道2時間」の自治体です。都市部に比べ家賃が安く、人口密度も低いことをアピールしました。都市部の家族が悩む待機児童や学童保育の倍率も低く、緑豊かな場所も多い。これまでは週5通う前提だったため、実際に引っ越しを決断して貰うには自治体も相当な時間と推奨リソース(宣伝費や担当する人材など)が必要だったものの、それが近年著しく下がりました。そこで、引っ越しをする家族に対し「補助金」を支給する自治体も増えてきています。具体例を見てみましょう。
自治体によっては住宅購入(建築)に重点を置いた補助制度から、賃貸入居のサポート、交通費のサポートまで多岐に渡ります。
佐久市内で住宅を購入する際の補助金制度。これまでは同一年内での新築住宅工事着工・竣工が必要条件だったため移住のタイミングが難しかったのですが、令和2年からこの条件が除外されました。
・新築物件の場合
新築物件の取得費用:最高40万円(住宅の新築費用または新築住宅の購入費用の2分の1以内。ただし土地代を除く。)
※市内事業者との契約に限る。
・中古物件の場合
中古物件の購入費用:最高20万円(中古住宅の購入費用の2分の1以内。土地代を含む。)
※そのほか空き家バンク登録物件やリフォームなどは諸条件あり
40歳以下の若者に限定した取組み。「交付申請時(事業完了時)に40歳以下で配偶者がいる方、または中学生以下の扶養親族がいる方」という条件があります。
・助成金額
10万円から136万円
・条件
新築工事は1000万円、中古改築は100万円以上の工事が条件
遠距離通勤を選択しつつも、今後の転勤の可能性から自宅を建てず賃貸を選ぶ転入者に向けた支援制度です。公的なURなどの住居を斡旋するパターンと、純粋な民間住宅への家賃を補助する姿勢に分かれます。
・対象者
申請初年度の4月1日から過去1年以内に住民登録した方(単身世帯、家族世帯、子育て世帯)
・助成額
単身世帯:対象経費の2分の1の額、又は7千円のどちらか低い額
家族世帯:対象経費の2分の1の額、又は1万5千円のどちらか低い額
子育て世帯:対象経費の2分の1の額、又は2万円のどちらか低い額
※対象経費:家賃月額(管理費・共益費・駐車場使用料は除く)から就業先の住宅手当を除いた額
・交付期間
対象となった月から36ヵ月
住居に対してではなく、居住者の通勤に対して支援をしています。上越新幹線の通勤定期券を購入し、越後湯沢駅から通勤する人に対して、補助金が支給されます。
・金額
新幹線の通勤定期代に対し月額最大5万円
・期間
最長10年間
東北新幹線も東海道新幹線を利用して東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県の通勤する40歳以下の人を対象にしています。
・金額
月額上限1万円
・期間
最大36ヶ月支給
自治体による通勤手当の代表格は新幹線通勤です。勤務時間以外を自然豊かな場所で過ごせるほか、新幹線の終電までに退勤しなければならないため、メリハリのある仕事が可能になります。かつ新幹線のなかは高質なソファと落ち着いた時間。仕事にもプライベートにも活用できます。
住宅購入・賃貸・通勤通学のほかにも、移住者を増やすアイデアを各自治体は仕掛けています。現役世代の家計にとって大きな割合を占める教育費の補助から、高齢者の扶養に対しての補助まで多角的です。介護による離職問題を予防するための補助制度もあります。どんな制度が自身の家計にとってベターかを考え、移住候補を定めていくのも賢い方法です。
とても好条件な補助金制度は、移住の後押しにとなります。ただ、補助金申請にはいくつかのポイントがありますので注意しましょう。なお、補助金と助成金という言葉の違いは起業時などは大きな違いがありますが、住宅補助においてはほとんどありません。自治体によって言葉を変えている認識で問題ありません。
注意したいのは、その条件は本当に今年度なのかという条件です。自治体も定期的に条件を見直しているため、インターネット等で調べて本格申請しようとしたら前年度だったという話も。まとめサイトなどで確認するのはいいですが、「最終的には必ず当該自治体のホームページで確認する」ようにしましょう。
自治体によって住宅着工時の申請を必須とするところもあれば、契約時の申請を必要とするところもあります。また地域振興のため、必ず地元のハウスメーカーや工務店による請負工事を条件とするところも。申請のタイミングを含め、各自治体による申請条件の違いに注意しましょう。
勤務先からの住宅補助は所得税の対象になりますが、現金や現物支給の場合、自治体からの住宅補助も課税対象となるケースがあります。補助金制度の導入歴が浅い自治体などは、参画者に十分な説明が出来ていない場合も多いため注意しましょう。わからない場合は自治体の担当者に「税金はどのようになりますか」と質問することが大切です。また住宅補助は受給できたものの、勤務先からの通勤手当に上限があり、結果持ち出しが多くなってしまったという事例も。特に近年は通勤定期代において「1ヶ月〇〇円ではなく、実費払い」に変更されている勤務先も増えており、その場合は領収書などの証明が必須です。
「長時間かけて週1回通勤」は今後、より当たり前の生活スタイルに変わっていく可能性があります。まずは移住先として気に入った場所を見つけ、補助金など諸条件を深掘りしていきましょう。その時にさまざまなリスクを先取りして見つけることで、移住後の高い生活満足度を実現することができます。
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